SPリンクさんの性格を固めるために書いてた小ネタが溜まってきたので少しずつ放出。
新しく仲間になったリンクは、恐ろしく隙がない。騎士の家系に生まれ、若くして姫付きの近衛騎士に任命され、厄災を祓った救国の英傑。その華々しい経歴や肩書きに恥じない振る舞いを、彼はこの世界でも崩さない。少なくとも、フォックスが見ている範囲でのリンクはそうだった。
「フォックスはすごいな」
だからリンクからそんな言葉を掛けられて、フォックスは耳を疑った。必要最低限しか口を開かないリンクが唐突に無駄話を始めたことにも驚いたし、その内容にも驚いた。すごいとは一体何を指しているのだろうか。こんな完璧人間にすごいなどと言われたら皮肉や嫌みに聞こえそうなものだが、疑う前にその言葉はすとんとフォックスの中に落ちてきた。そんなところまで完璧なのかと、驚きを通り越して感心してしまう。
「すごいって、なにがだ?」
「人柄が。君は良いリーダーなんだろうな」
「ひ、人柄?」
真面目で融通がきかないだのなんだのと、長所と短所をまとめて指摘されがちなフォックスにとって聞き慣れない褒め言葉だ。それでも良いリーダーだと言われたことは素直に嬉しくて、ぱたぱたと尻尾が揺れる。リンクの視線がその動きを追ったことに気付いて慌てて尻尾を押さえると、彼は珍しいことに少しだけ口元を綻ばせて小さく笑った。
「……俺は君みたいには出来なかった」
「どういうことだ?」
「仲間の一人から嫌われてた。それに、彼も含めて誰も守れなかった。……みんな死なせた」
話している途中で、リンクはそっと顔を背けた。今リンクがどんな表情をしているかフォックスにはわからないが、無理に暴くようなことでもない。淡々と無感動に響く言葉の重みがわかるだけに、下手に声を掛けられない。それでも、どんなに言葉が見つからなくても、何かを言うべき時がある。
フォックスはリンクの背中を励ますように軽く叩いた。
「でもお前は先に逝った仲間が守りたかったものを、ちゃんと守ったじゃないか」
フォックスが知っているのは、リンクの世界のハイラルが辿った歴史だけだ。それはただの知識でしかない。だから実際その世界に立っていたリンクからすれば、見当違いの慰めにしかならない危惧もあった。それでも寡黙で自分のことを語らないリンクが初めて見せてくれた胸の内に、フォックスはどうにか答えてやりたかったのだ。
リンクはしばらく俯いていたが、やがて顔を上げるとフォックスに薄く笑いかけた。
「……君が慕われる理由がわかった」
「慕われてるって感じじゃないんだけどな」
肩をすくめるフォックスに、リンクは笑って首を振る。普段の彼がまとっている近寄り難い雰囲気はどこにもなく、少し踏み込んだ分だけ距離が縮まった気がする。
気が向いたら、いつかお前の仲間の話を聞かせてくれ。
そう言ってリンクの肩を叩くフォックスに、彼は小さく頷いた。
