カスパルの落とし物にまつわる捏造妄想だらけの小話。
風花は4周目をまだクリアしてないので、進めるごとに過去書いた文章に綻びを見つけてしまいます。これも色々間違っていそうなのでご容赦ください。後々気付いたらこっそり修正すると思います。
友情のつもりで書いたけどだいぶCPに見えるかもしれないし見えないかもしれない、わからない。
先生がうっすら存在しますが、ベレト先生かベレス先生かも定かではないです。
先生、また落とし物を集めて持ち主を探し回ってるんですか? 貴方って人は本当に変わりありませんね。落とし物のなにがそこまで貴方を駆り立てるんですか。
……どうしても持ち主がわからないものがある、ですか。はあ……僕が力になれるとは思えませんが、見るだけで良ければ付き合いますよ。って、けっこうたくさん出してきましたね。どこに入れて持ち歩いてるんですか、それ。え、五年前に拾ったものもある? ……いやそれ、他学級のものも絶対混ざってますって。下手したら僕らが手に掛けた人の遺品になってたりしますよ、嫌だなあ。
うーん、特に見覚えのあるものはないですが……あ、これ。……やっぱりそうだ、間違いない。このお守りはカスパルのです。そうか、先生が持ってたんですね。えっ、その怪しい小袋はお守りだったのかって? 先生、なかなか失礼なことを言いますねえ。制作者に向かって。
ふふ、そうですよ。このお守りは僕が作って、カスパルにあげたものなんです。たしか士官学校に入る少し前でしたかね。あいつは雷が苦手だってこと、知ってました? 士官学校で寮暮らしになるって聞いて、あいつが唯一心配してたのが雷のことなんですよ。実家のベルグリーズ家ではあいつに甘い使用人がいくらでもいましたから、雷雨の時は誰かがこっそりあいつに付いてやってたみたいです。雷が人の形をしているような、ベルグリーズ伯には内緒でね。でも士官学校ではそうはいかないでしょう、使用人を連れてくるわけにもいきませんからね。
最初は僕が当てにされていたんです。事前通達で寮の部屋割りを知らされてからのカスパルの狼狽えようは凄かったですよ。「なんでお前の部屋がオレの隣じゃないんだ?!」って、胸ぐら掴まれましたからね、僕。知らないよとしか言えませんよね、決めたのは僕じゃないですし。でもカスパルはそもそも僕と部屋が離れる可能性を考えてなかったらしくて、すごい勢いで落ち込んでました。いやあ、あんなに情熱的に自分を求められることなんて、この歳になってもそうそうないですよ。
あ、そうそう、お守りの話でしたね。貴方と話しているとついつい横道にそれてしまって。
入学前のカスパルは雷が鳴っても逃げ場がない寮生活を、たいそう不安がってました。その他は全部楽しみにしてたので態度には全然出てませんでしたし、雷雨の際にあいつをよく世話してた使用人ですら、雷のことは忘れていたと思います。でも僕はほら、腐れ縁なんで。わかっちゃうんですよね、あいつがほんの少しでも不安がっている時は。
だからって雷が鳴る度に二階に上がってあいつの手を握ってやって……なんて、考えただけでも面倒くさいじゃないですか。なのであいつ一人でも大丈夫なように、そのお守りをあげたんですよ。うちに出入りしていた行商人から資材を買って、布を切り出して刺繍をして縫い合わせて、覚えたての気休めにもならないマジックシールドの魔法をかけた硬貨を入れたのが、それです。
え? これを作るほうがよほど面倒? 先生らしくもないですね、お守りは一回作って渡せば半永久的に効果があるでしょう。黒雲が空に浮かぶ度に気を揉む必要も、遠雷の音を聞いてすっ飛んでいく必要もない。そう考えると安い初期投資ですよ。
……え、なんですかいきなり。これを僕からカスパルに渡せってことですか? うーん、悪いんですけど先生から渡してやってくれませんか? あいつ、それをなくした時けっこう落ち込んでたんですよ。僕も探すのを手伝ったんですけど見つからなくて、もう雨に降られたみたいにしょぼくれちゃってて。あいつってあれで変に気を遣うとこがあるので、制作者である僕に対しての申し訳なさとか、いろいろあると思うんです。先生がずっと持ってたってわかったら、ちょっとはあいつの気持ちが楽になるかもしれないでしょう? というわけで、お願いしますよ。
それにしても先生、楽しそうですねえ。僕のくだらない話をそんな顔して聞いてくれるの、貴方くらいのものですよ。……くだらなくない、ですか。そうですね、貴方はいつもそう言ってくれるので、つい話したくなっちゃうんですよね。
……僕もカスパルの話をしている時は楽しそう? まあ、幼馴染みの話をしていれば誰だってこんなものじゃないですか? ……もっと聞きたい、って……前から思ってましたけど、先生ってカスパルのこと気に入ってますよねえ。いいですよ、貴方になら話しても。といっても、改めて話すようなことは思いつかないんですが……ああ、はい。それなら。
カスパルって身体的接触を好まないんですよ。必要なら相手が女性でも平気で担ぎ上げたりするんですけど、無意味に触れ合おうとはしないですね。そう育てられたからっていうのもありますよ、あれでも貴族としての教育は一通り叩き込まれてますから。でもあいつの場合は礼節とかじゃなくて、相手と近すぎると喧嘩のスイッチが入るとかそういう野性的な本能っていうんですかね、そのせいだと僕は思っていますけど。カスパルの得意な間合いって狭いんで、近づかれると警戒してしまうんじゃないですか。ええ、僕も例外じゃありません。……よく肩を組まれているのは、まあその通りですけど。え、そんなにべたべたはしてませんよね?
えっと、そんなカスパルですけど、雷が鳴った時だけはぴったりくっついてくるんですよ。あいつ体温高いんで、くっつかれると眠くなっちゃって。雷が鳴ってる時って大体暗いじゃないですか、だから余計に眠気を誘うんですよね。怖がってるあいつの横でうとうとしてると「なあ」とか「おい」とか、普段からは考えられない小さな声で言いながら揺さぶってきたりするんです。
……かわいい、ですか。まあ、そうですね。かわいいって元を辿れば可哀想から派生していると言いますし、先生の気持ちもわからなくもないですよ。え、僕はどう思うのか、ですか? うーん、改めて訊かれると答えにくいですね。とりあえず、かわいいとは思わないですけど。
……このお守り、すごく大事にしてもらってたんですよ。さっき、僕がこれをどう作ったか言いましたよね。先生にもわかると思いますけど、当時の僕の魔力なんてたかが知れてます。ありったけを注いだって、1日も持たない。お守りと呼ぶのもおこがましい、ただの硬貨が入った布袋でしかないんです。だけどこれを渡した時、カスパルはすごく喜んでくれました。あいつは馬鹿じゃない、このお守りが実際には雷を遠ざけてはくれないことくらい、わかっていたはずです。でも、信じてくれたんですよ。僕の拙いまじないが自分を守ってくれるって、心の底から。
このお守りがなくても、カスパルはきっと平気だった。今の、もっと強くなったカスパルならなおさらですよ。これは最初から、あいつには必要のないものだったんです。だけど……それでもきっと、あいつはこれが見つかったことを喜んでくれると思います。子供の頃と何ひとつ変わらずに。あいつは……カスパルは、そういうやつなんで。
……ええ、そうですね。あいつのそんなところが、僕は――愛しいなあって、思いますよ。
なんだよ先生、わざわざ呼び出すなんて珍しいな。オレ、なんかしちまったか?
ってこれ! リンハルトのお守りじゃねーか! いやいや違う違う、間違いなくオレのもんだけどよ、作ってくれたのがリンハルトなんだよ。それは知ってる? なんだ、リンハルトに聞いたのか?
そっか、先生が持っててくれたのか……ありがとな。これ、オレの大切なもんなんだ。それなのになくしちまってさ、探しても全然見つからなくて、そうこうしてるうちにあんたはいなくなるわ戦争が始まっちまうわで……なくしたこと自体を、忘れちまってたな。
それにしてもなくしたのは五年前も前なのに、やけに状態が良くねえか? ほつれてもないし、汚れてもないし。ここだって戦場になってたっていうのによ、いったいどこに落ちてたんだ? え、天馬の節に食堂で拾った? 五年前の? ってことは先生、五年もこれ持ってたのか!? あんた崖から落っこちて五年間寝ながら川に流されてたってのに、これは落とさなかったのかよ?! 本当にすげえな、あんた!
ん? 五年間川に浸かってたわけじゃない? 細かいことは気にすんなよ、それにあんたはずっと寝てたんだろ? じゃあ浸かってたかもしれねえじゃん、覚えてないだけで。
でもそっか、五年間あんたの手元にあったのか。それなら……なくしたことにも、意味ってもんがあったのかもな。
これさ、さっきも言ったけどリンハルトが作ってくれたお守りなんだ。なんつってたかな、雷はヤクサイの象徴だから、雷除けはテンじてヤクヨケに通ずる、とかなんとか……あーわかんねえ! 正確なことはリンハルトに聞いてくれ! とにかく、そのお守りは雷の他にもいろんなワザワイに効くもんなんだってよ。それなら、先生が寝こけてた五年間、あんたのことを守ってくれてたかもしれないだろ?
あー、まあオレは確かにまじないを信じてるわけじゃねえよ。でもそれ作ったの、リンハルトだからなあ。
あいつの……ヘヴリング領にはさ、帝国ですげえ有名な祈祷の名所があんだよ。ヘヴリングといやあ鉱業で、鉱業って危険がつきものだろ。だから無事を祈るまじないが発展したんだって聞いたな。あいつんちも代々高度な白魔法を継いできててさ、ヘヴリングってのはそういう土地なんだってよ。でもリンハルトはさ、子供の頃から祈祷だのなんだのにはぜんっぜん興味なかったんだよな。白魔法は実際に効果が目に見えるから別だろうけど、祈りやらまじないやらは信じてなかったし、今だって信じてないと思うぜ。そのリンハルトがさ、オレのために作ってくれたお守りなんだよ、これ。効果がないわけないだろ?
え、オレのためのお守りだから先生が持ってても意味ない? んー、まあそれもそうか? でもオレ、先生のことは好きだし、いなくなった時は心配したからな。オレのためって言うなら、オレの大事なもんだって対象になるだろ? だからやっぱり、先生にもちゃんと効いたと思うぜ! それにリンハルトだって、あんたのこと大好きだしな!
お、なんだよ先生。顔が赤くなってるぜ、あんたも照れたりするんだな! でもなんで照れたんだ? 照れるようなこと、なにもなかっただろ?
……なんで雷が苦手なのかって? 露骨に話そらしてくるよなあ、まあいいけどよ。えーっとなんだ、雷が苦手な理由か。まあ……一番の理由は音だな、近くに落ちた時のあの音がどうも苦手なんだ。あ、でももうさすがに平気だぜ! 野営地で雷に怯えてちゃ、戦になんねえしな。まあ、苦手は苦手だけどよ。
……小さい頃はさ、雨が降るとリンハルトがよく隣にいてくれたんだよ。怖がってんのがカッコ悪りぃから、最初はあいつにもあんまり見られたくなかったな。だから怖くないふりしてたこともあったんだぜ。あいつはそういう時、なにも言わないんだよな。オレが強がってるだけなのはわかってても、なにも言わねえ。黙って隣で本読んだり、居眠りしたり……当たり前に傍にいてくれっから、なんか強がってんのがバカバカしくなってきちまってさ。そんで安心したっつーか、いつだったかなあ、雷が怖いってあいつに白状したことがあったんだ。そんなの、オレがわざわざ言わなくてもリンハルトは知ってたし、オレもそれわかってたと思うんだが、なんで言ったんだったかなあ……忘れちまったな。でもその時のリンハルトの反応は覚えてるぜ。あいつは「そうなんだ」って頷いて……うん、そんだけだったな!
実はさ、リンハルトに雷が怖いって白状してから、少し平気になったんだよな、雷。それまでは怖くて仕方なかったのに、布団被って目を瞑ってれば一人でも雷雨の夜を越せるくらいにはなったんだ。でも、そのことはリンハルトには言わなかった。お前のおかげで平気になったんだって、お前はやっぱりすごいやつだって、言いたかったんだけどな。なんでか言えなかったな。
嵐の夜のリンハルトはさ、いつもとちょっと違ったんだ。なにがって説明できないんだけどよ、雷が鳴ってる時にしかいないリンハルトってのがいたんだよ。オレ、そのリンハルトがたぶんすげえ好きだったんだよなあ。雷はイヤだけど、雷の時に傍にいてくれるリンハルトは好きで……なんつうんだっけな、こういうの。セッチュウ? じゃなくて……カットウ、アツレキ? んー、よくわからん! けど先生、その顔はオレの言いたいこと伝わってるだろ? ならいいか!
雷の日のリンハルトはさ、よく手を握ってくれたんだ。あいつの冷やっこい手がぬるくなるまでずっとだぜ。本を読みながらって時もあったな、こう膝の上で本を広げて、片手でやりにくそうに頁をめくってた。本なんて、両手使って読む方が絶対にラクだろ? なのにあいつ、そういう時に自分から放したこと一度もないんだ。オレがもういいって言うまで、ずっと握ってくれてたんだよ。
……ああ、そっか。もう平気だって言っちまったら、リンハルトがオレのとこに来なくなるって思ってたのかもしれねえ。だからオレ、あいつに言えなかったのか。……うおおお、なんかこっ恥ずかしくなってきたぜ! あんなガキの頃からあいつは優しかったんだな。
ん? ああいや、手を握ってくれるから優しいとかじゃなくてさ。リンハルトは、オレが少し雷を克服したのとか、それをオレが言わなかった理由とか、気付いてたと思うんだよ。ガキの頃からバレてたんだろうなって思ったらこっ恥ずかしいし、でも気付かないふりしてお守りまでくれたリンハルトは優しいよなって話だ。
ああ、そうだろ! あいつは最高なんだって! さっすが先生、わかってんじゃねえか!
おっと、とにかくありがとな、先生。わかったわかった、もう落とさないように気を付けるって。じゃ、オレは用事が出来たから行ってくる! ああ、これをリンハルトに見せてやろうと思ってな。あいつ五年前一緒に探してくれたから、見つかったぜって報告してやんないとだろ?
なんだよ先生、嬉しそうだな。おう、先生もな! そうだ、この後時間あんなら一緒に飯食おうぜ、リンハルトのやつも連れてっからさ! へへ、それじゃ、また後でな!
